はじめに
雛人形に添えられたパンフレットに「雛祭りの起こり」と題した一文があり、それを読んで、よく分らないなという印象を持ったのが事の始まり。こう言うとき素人が疑問解決に手にするのは百科全書です。そして、三、四のものを読み比べると、大体似ている部分と全然違う部分とがあり、どれが正しいのか迷います。中には勿論、一般に常識的に口にされているものもあり、それを否定するようなものもありでかなり混乱を覚えました。
一つ分ったことがありました。それは、'雛祭りの起原'に関しては総べて*1古代の宮中行事から出た、という解釈から論じられているらしいことです。
そこで、雛祭りの源流という所説を少し取り上げ、検証を試みてみました。そして意外なことに気付き驚きました。それは、古代に*2唐の国から入って来た「*3祓(はらい)の*4呪術」とわが国固有の「*5禊(みそぎ)の行事」が*6習合したという固定観念から所説をつくりあげていることです。その結果、牽強付会(けんきょうふかい⇒むりやりこじつける)の説も生み易く、あいまいな部分が残ってしまいます。
ということで、常識で読んでいて、あいまいだなという部分がちょいちょい出てくることが納得できました。そこで、検討したいくらかの所説の中の、主な柱となるものを記してみます。
'雛祭りの起原'を検討するのに、次の二書を底本とし、その他いくつかの書を援用してみます。
『 *7有職故実 』(国文学大講座刊行会昭和十年刊、著者:風俗研究所長*8江馬務)
『 雛祭新考 』(思文閣出版昭和十八年刊、著者有坂與太郎 )
主に両書から抜粋引用させて頂きますが、出来るだけ原文説明の形で、原文は避けたいと思います。